water_sky’s waterbound diary

酒に溶かしたやり場のなさと打ち明けられた愛のあいだ、泥の川とディラックの海のあいだ

残念桜と真岡鐵道

 
 Q.もう二月のニュースも「雪が降った」って告げた どこでさ?
 A.茂木でさ

 とは言ったものの、2月がどうだったかなんてもうすっかり忘れてしまった。今年は例年にも増してあまりに気候の変化が著しく、厚手のコートを羽織って出掛けるのが億劫だったのが遠い昔のことのよう。と言っても、出掛けるのが億劫なのは変わらないのだが…。
 そんな、追憶の果ての2月、栃木県内を車で走っていると、ふと窓の外に気になる光景を見つけ立ち止まる。寒さになかなか消え入ることのない雪の中に1本の木。あれはもしかして桜ではないかな?と、近寄ってみたいのだけど雪が積もっていて長靴でもないと近寄れない。たぶん桜だろう。いいなあ、雪景色の中に満開の桜。なんて、雪国の風景でも撮ってみたいな。と思うけれど、そんな、おっぱいのでかい美女が話しかけてきたみたいなうまい話はそうあるものではない。まあ、春になって覚えていれば来てみてもいいかな。という感じであった。
 
 そしたらたまたま、思い出した。というか他の桜を見に行く時に通りがかると、まだつぼみも出ていないような感じだった。もう栃木の桜もあらかた散ってしまっていたし、咲いているとすればこの桜だけ。行くだけ行ってみるか。という感じで重い腰を上げて行ってみると、偶然にもばっちりのタイミングに出合うことができたようだ。


残 念 桜

 写真右には、男性が座っているのが見える。僕は外面だけはいいので、こういうときには積極的に話しかけに行く。男性は、列車を待っているとのことだった。そう、桜のすぐ上には線路が通っており、真岡鐵道が走っているのだ。
 ところで、どうして「残念桜」と呼ばれるのだろう。桜の傍らに看板が立てられているので、由来を見てみよう…と思ったら、風雨にさらされてビリビリに破けてしまっている! 仕方ない、ネットで検索すれば名前の由来なんて幾らでも出てくるから、それで見てみてよ。みんな書いてくれているから。そんなお前が残念て? うん、よく言われる。まあそれは措いといて。
 例年だと開花はもっと遅くて、そのころになると田んぼに水が張られて水面に映る桜がきれいなのだそうだ。
 「鉄道には興味ないの?」と男性。格別興味を持ったことはなかった。話しているうちに突然電車がやって来て、2人とも急いでカメラを向け写真を撮る。あっという間に過ぎ去ってしまった。男性は通過する時間を確認してもうちょっと待つという。僕は桜を去りつつ振り返って写真をぱしぱし。そのうちに時間が来て、茂木駅からの折り返し電車がやって来た。慌てて撮ったら、意外にもなかなか面白かった。



 せっかくなので、次の時間に来る電車も待ってみよう、よし今度折り返してくる電車も…と、何だかんだで粘ってしばらく写真を撮っていた。


 望遠レンズで。このアングルが気に入った。

 真岡鐵道といえば、SL(Steam Locomotive=蒸気機関車)が定期的に走ることで有名。ついさっきまで興味なかったのが、俄然SLと桜の風景を撮ってみたくなってしまった。折りしも次の日がちょうどSLの走る日で、また来てみることにした。
 SLが走るときには人が大勢来るだろう、と昨日の男性は言っていたので、混むかな…と思いながら早めに着いてみると誰もいない。アレッ?と拍子抜けしながらも、昨日気に入ったアングルを確認しつつ気取って歩道脇のフェンスによじ登ったりなんかしちゃって、さあSLいつでも来いとカメラを構えていた。けれどちょっと早すぎたか、まだ来ない。そのうちに腕や足が疲れてきて少し休んでいると、桜のすぐ近くにだんだん人が集まってきた。その人たちを遠くから眺めてぼーっとしているうちに、気づくとSLが目の前に現れてしまった。慌ててカメラを構え直すも、構図は崩れるしブレるしで大失敗。そのうちのましな1枚。



 せっかくのSL登場で撮影をミスってしまったのは残念だけど、ぜんぜん残念じゃないよ!な残念桜でした。来年はしっかり撮るぞ。
(写真撮った日:2018年4月13、14日)