water_sky’s waterbound diary

酒に溶かしたやり場のなさと打ち明けられた愛のあいだ、泥の川とディラックの海のあいだ

トツ撃、戸津辺の桜だベ[矢祭町中井戸津辺]

 新年あけましておめでとうございます。永遠に続くように思われたコートの重みもあっけなく終り、春がやって来ました。とはいえ年々傾向を増していく、季節の変わり目のまだら模様化。どこまでが冬でどこからが春なのか、それとも夏なのか。あっけなく抜き捨てようとしたはずのコートも実はそっと小脇に抱え込んだまま、新たな生活にも今ひとつ踏ん切りがつかず戸惑い迷い…、そんな日々を送られている方も多いのではないでしょうか。私は40年がとこ毎日そんな暮らしです。

 でも季節の変わり目ってそもそも、そんなあやふやなものだったかもしれない。人の心も晴れたり曇ったり雨が泣き出したり。グラデーションで変わってゆくものでしょう。畑に適当に畝を上げて目見当で種を蒔くような、適当に目印をつけているようなもの。でもそうやって一年が回っていくものでもある。

 だったら桜を見なきゃ春始まらんやろ! ということで見に行きました、「戸津辺の桜」。

 当ブログの「福島の桜」カテゴリで一番最初に紹介したのが戸津辺の桜。福島県内でもっとも早く咲く一本桜として有名です。国道沿いに大きな看板が立っているのを目にしたことがある方も多いと思われますが、2024年版の福島県内「一本桜」番付では堂々西の大関にランクされています(一本桜...東横綱は「三春滝桜」 福島県内樹齢100年以上、24年番付:情報スクランブル365:福島民友新聞社 みんゆうNet)。

戸津辺の桜

 前日があいにくの雨だったのでどうかなと思いましたが、天頂部は花が落ちている(これは樹勢の問題か)もののほぼ満開。

 今年は桜を取り囲む木道が新しく設置され、そこを大勢の人たちが歩きながら「これができたばかりの木道か」「新しい木の香りがしていいね」などと言い合っていました。

 うかがったのは平日の午前中でしたが、ひっきりなしに見物客がやって来て大盛況。誘導員の方が4、5人いるのでえらい気の入りようだなと思いましたが、帰るころには駐車場が満杯で大混雑。こりゃ誘導員を配置しないと大変なことになるな…と実感しました。以前は土日だけだったように思いますが、一大観光スポットに成長したようですね。戸津辺の桜は樹齢600年超、幹回り18mと福島県内でも有数のエドヒガンザクラですが、ここは桜を愛でるというよりは、桜を愛でる人々を愛でる場所になりそうです。そう、誰もが重ったるいコートを脱ぎ捨てて、軽やかな春の訪れを眺めて楽しんでいるのでした。

 

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 柴田聡子。たまたま「後悔」のPVを観た時に異色のアーティストの登場に驚愕したものだったが、だが異色と言うべきではなく、生々しい一人の女の発露だった。それは今作「Your Favorite Things」にも通底していて、一人の人間の赤裸々な"現在"が刻み込まれている。いま変わりゆく、いまの私。どの曲もらしさが出ていて、一聴して分かるのはとにかく歌詞だろう。独特なワーディングはその言葉選びと接続、曲への乗せ方どれを取っても生々しさの傷跡が見受けられる。中でも「Reebok」。ここには"現在"を訴えるべき不安定なゆらぎが曲に貫かれている。

 繰返し現れる愉快と不安。永遠に近いほど弛緩しているのに、つねにその隣にははじけ飛んでしまいそうな緊張感があり、それが徹底的に描かれているのだ。柴田聡子本人のライナーノーツには「この曲のテーマは『シティーポップ』だった」「スムーズであることの良さ」、また誰かに寄り添うときの心情が書かれており、まさにこの曲のテーマそのものだなと思う。背中から巻きついてみたり、そのリーボック水が染みないの?と訊いてみたり、何げなく行う全てのことが、「痛むところに薬を塗って症状に対処していく」ための必死の努力であり、それが柴田聡子の表現する一人の人間の"現在"に重なり合う。シティーポップはその痛みと努力をいい感じに淡く目立たないものにしてくれる。だからシティーポップはたまらなく爽快で哀しい。

 

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 それでは今回は柴田聡子の「Reebok」を聴きながら、戸津辺の桜の残りの写真をご覧ください。今までだましだまし使ってきたオリンパスのレンズ12-60がぶっ壊れました。PLフィルターを付けるためフードを外そうと回したら、リング部ごとポキッと折れてしまった。まあ接着し直せば使えるけれど、そもそもレンズ内部にカビが発生しているのだった。描写そのものは14-54の方が好みだとの印象もあるのでそちらを買い直すか、システム自体を更新するか…(未だにオリンパスE-3を使っています)。まあそれも来る日曜日の桜花賞次第ではある。花は、花は、花は咲く。私は何を買うだろう…