water_sky’s waterbound diary

酒に溶かしたやり場のなさと打ち明けられた愛のあいだ、泥の川とディラックの海のあいだ

越代延命の清水[古殿町大久田]☆☆☆☆

 
 ひとつ前の記事で、天皇賞・春に出走するキタサンブラックに対して、かっこつけた物言いで<日本の現代競馬を、ディープと全く同じ血をもつブラックタイドの現下最高傑作、いや今後もかもしれないが、キタサンブラックという馬が正攻法の競馬で更新し続けている>などと書いたら、まさか本当にディープインパクトのもつ天春レコードを更新してしまうとは思いませんでした。結果を見れば前有利・内枠有利だったのは間違いないんですが、あそこまで強い競馬をされると、まあ脱帽というほかないですよね。文句なしの連覇と言っていいと思います。サトノダイヤモンドは結果的に外枠に泣きましたね。できればレコード更新したキタサンブラックのその隣に、サトノダイヤモンドがいてほしかった。宝塚記念での再戦があるのかは分からないけど、観たいような観たくないような気分です。
 
 4月末になっても咲いていた桜が、5月に暦を変えた途端、急に消えうせていた。村上春樹の中編小説「国境の南、太陽の西」で、島本さんとの激しい情交のあと、目が覚めると女は「僕」のもとから跡形もなく姿を消していた─。そう、数日前まで咲いていたはずの桜の木が、今ではもうすっかり新緑の中に埋没しているのを目の当たりにした時、僕はその場面の耐えがたいほどの静けさと孤独を思う。その時ほど、自分というものが自然のサイクルから隔絶された存在であることを痛感するものはない。だから桜はイヤなんだ…、そうひとりごちた時、待てよ。僕は湧き水めぐりを生業としているんじゃないか(してない)。そうだ、基本に立ち返ろう。「感動や信用は甘い菓子だ。だからあんまり喰うな」とは菊地成孔の言葉だが、それにならえば「桜は生クリームだ。だから適宜水を飲むように」である。そうだったそうだった、よおし、では、ぐびぐびぐび。
 というわけで今回喉を潤すのは、「越代の桜」(http://d.hatena.ne.jp/water_sky/20170430/p1)に程近い場所に湧き出る、「越代延命の清水」。
 


越 代 延 命 の 清 水

 
 国道49号から越代の桜にアプローチすると、途中で出くわします。道路のすぐ脇に湧出。
 当地の案内板によれば、ここより北の犬仏山に狩りに来ていた武士が途中で腹痛を起こしてもじもじ休んでいると、僧侶が通りかかってふもとのこの湧き水を教えてくれて、早速飲んでみるとたちまちにして腹の具合が戻り、元気になったということ。以来、この武士の家では、代々山を越えてこの水を飲みに来るようになり、そこから「越代」という地名をとったそうな。また、この武士がお礼に桜に木を植えて桜が大きく育つことと自分の長寿延命を願ったことから、「延命の清水」ともいわれるという。
 湧出量は、訪問時が春先だったこともあるがきわめて豊富。測ってみたけど正確な値は忘れたけど、1分間に40リッターくらいは余裕で出てるんじゃなかったかな。
 地元の方が整備されていて周辺はきれいになっている。個人的には岩の配置など、人為的な構造が目に付く、いうまことに勝手な理由で五つ星には届きませんでした。山中に湧く水ということで、水質は良好じゃないかなと思う。越代の桜を見たついでにぜひ手酌でもいいから口に含んでいきたい名水。
 
 越代の桜はここから南方向へ700mほど進んだ先にある。


 桜 桜は温いのう 柔いのう 甘いのう 散っても笑うて桜を思い出してくれ