いっぱい清水。何がいっぱいなのか? 想い出がいっぱいなのか、水だけに。古いアルバムなど持ってはいない、過去は前回(acute!! 秋保大滝[仙台市太白区] - water_sky’s waterbound diary)で全て消え去ったから。では何がいっぱいなのか。実は、水量がいっぱいでした。
タンクの底を穿つ水の勢い! 写真ではあまり伝わりませんが、しっかりホールドしていないとタンクごと弾き飛ばされてしまいそうな水量です。およそ15、6秒もすれば12リッターのタンクを満たしてしまうのですが、あまりに水圧が強いためにタンクいっぱいに入れるのは至難の業。しばらく格闘しましたが、しとどに濡れたわりにはうまくいかなかった。
ここは福島の浜通りの最北部、新地町の山の中。宮城県丸森町とをつなぐ峠道の麓に湧き出ています。福島民報社の名著「ふくしま湧水物語」(https://www.minpo.jp/publish#yusui)でも紹介されており、個人的にこの湧き水は聖地のひとつとなっていました。昔、福島市から川俣町、飯館村、葛尾村、大熊町とめぐった時には、新地町はここからさらに北へ…と思うと、とても遠い場所に感じられたものです。
水源は、五社壇(標高383m)という山の北麓に北向きに湧出。山の斜面に溝を掘って道路沿いまで誘導しているようです。水源の山は大した標高ではないものの、おそらく年間通して豊富な水量を維持しているのでしょう。福島の豊かな自然がここでも容易にうかがい知れます。
水量がいっぱいだからいっぱい清水、ということもあるのかもしれませんが、由来はひとたび(1杯)飲めば効力があるほどの名水、あるいは1杯飲むともう1杯飲みたくなるほどおいしい水、とのことです。またお年寄りが飲むと元気になることから長寿の泉とも呼ばれているそうです。
現地には水質分析表もはり出されていて、「カルシウム分が非常に多く、鉄分がない日本一おいしい水」とのことです。確かに口に含むとザラッとした鉄の味がせず、むしろほのかに甘い。遠くに感じられた場所ですが、ひとたび来てみればまた来たいと思わずにはいられない、素晴らしい湧き水です。
湧き水のそばには地元の有志が建立された「福田ききわけ延命地蔵尊」があり、湧き水を汲みに来た人をお出迎えしてくれます。
アクセス
新地町の北側に位置する国道6号の福田交差点を、西に向かって曲がり県道103号に乗る。道なりに2キロ弱進むと片側1車線の道路が狭まって1車線になるがひるまず進むと、小さな交差点の右手前に「福田ききわけ地蔵尊」という大きな看板が見えるのでさらに直進。前方に常磐自動車道の高架橋が見えればまもなく。山の中に分け入って右側に福田ききわけ地蔵尊と駐車スペースが見えたらゴール。道路を挟んで左手の山側斜面に湧出。
以上、新地町の「いっぱい清水」でした。実は山頂を越えた南側にも湧き水があるということなので、勇躍向かってみることにしましょう。そこで私は"神様"となるのですが、それは次回にて。