water_sky’s waterbound diary

酒に溶かしたやり場のなさと打ち明けられた愛のあいだ、泥の川とディラックの海のあいだ

女沼と思いの滝[福島市土湯温泉町]☆☆☆☆

 
 エリザベス女王杯、いかがだったでしょうか。クイーンズリングデムーロがうまくエスコートして弾けましたね。私は去年の成績とエリザベス女王杯はマンカフェ産駒が未勝利ということで軽視してしまいましたが、厩舎コメントの「完成の域に近づいてきた」は本当だったんですねえ。今回のエリ女はふたつのM、すなわちミッキークイーンマリアライトの2強争いの様相を呈していましたが、スローペースになったとしてもミッキークイーンの末脚は魅力的、対してマリアライトは切れ味勝負になったら分が悪いので道中どのように動いてくるのかが注目されましたが、まさかの2頭とも連に絡まないという結果。そう、もうひとつMの存在、ミルコ・デムーロがいたというわけ(+マンハッタンカフェのMか)。2着のシングウィズジョイは追い切り動画で雄大な動きが良いとみていたんですが、予想段階では全く失念。まあデムーロ×ルメールを押さえとけば当たったという、またもや何だかな〜という側面もあるのですが…。ちなみに私の勝負4頭は、マリアライトパールコード・アスカビレン・プロレタリアトでした。カスりもせずトホホ… パールコードはよく頑張りました。
 さて来るマイルCSですが、ジャパンカップの1週前追い切りにおける各馬の貫禄に比べると(ゴールドアクターは相変わらず素晴らしいフォームで駆ける)、どうにもピリッとしないというか、見劣りしてしまうように映ったのですが。人気各馬はそれなりにこなしていると思いますが、取り立てて良く見えたわけでもない。そんな中良いと思ったのは、ダノンシャークサンライズメジャー。両馬とも高齢ですしDシャークはこれがラストランということ。メイチの仕上げかどうか分かりませんが、栗東坂路を馬なりで51秒台の好時計。もともと調教は動くタイプでしょうが、時計も出ていますし、同水準にあったと思われる阪急杯では完全に脚を余して最後は追わずの7着。ミッキーアイルの動向が気になるところですが、どうもスローに流れそうな予感。展開頼みのところは大きいですが、一発に期待し有終の美を飾ってほしい。アタマまでとは言わない3着内で。サンライズメジャーは時に繰り出す鋭いというより豪胆な末脚が魅力。とはいえ今回大外に入ってしまったし馬体重も大幅増のよう。近走をみるにある程度前に着けていくのかもしれません。となればサンライズメジャーがハナを叩いてミッキーアイルが番手につけるような展開もあるかなと思っています。後はガリバルディの末脚も見限れない。馬場が渋ればさらに確実に伸びてくるとは思われます。さて、どうなる。

 
 隠津島神社の境内地・木幡山の麓で「じゃねぶり石」と出合い、土地の人から「夏無沼の蛇が女に化けて土湯温泉の女沼に逃げていった」という伝説を聞いた(http://d.hatena.ne.jp/water_sky/20161116/p2)。土湯温泉街は吾妻連峰の東麓にあり、女沼は土湯温泉からさらに山側に1キロほど入ったあたりに位置し、男沼と仁田沼と合わせて遊歩道が設置され周遊できるようになっている。
 しかしなぜ女沼なのだろう? もちろん、伝説で蛇が夏無沼から逃げるのは旱魃のためであり、昔から土湯温泉の周囲には水資源が豊富だったのだろう。吾妻連峰の山の神に降雨を祈願するにしても、直線で捉えれば女沼はほぼその延長線上に浮上する。だが、素人解釈の浅はかさを承知で言うなら、そこには何かしら隠喩的なものを感じずにはいられない。蛇が女に変わるあるいは女が蛇に、というのはよくある類の話だが、「傘を差した女」が土湯「温泉」へ向かう途中に石を「ねぶ」っていった、というのが良い。ちょいと色のある話とも受け取れるし、旱魃による食料不足のため、やむにやまれぬ事情が発生したとみるのもさほど穿った見方とは思えない。
 いずれにせよ、蛇は女沼に移ったということなのだけど、私が訪れた時の女沼は、まさに蛇が出てきそうな神秘的な姿を見せてくれた。


女 沼

 
 

霧に覆われる磐梯吾妻スカイライン

 この日は朝方、まさに吾妻連峰の上にいて、吾妻小富士の外輪山を周遊するなどしていたのだが、途中から濃い霧が出てきてしまい残念ながら山を下りた。そのまま天気は下り坂となり、女沼に来ても一向に好天となる気配はなかった。いつもであれば女沼越しに吾妻連峰の自然豊かな山々が見えるはずなのだが、濃い霧がかかってしまって何も見えず。ただ、おかげで得難い景色に出合えたということもあるんだけど。
 湖面にしっとりとした新緑が淡く映る。プチ明鏡止水といった境地だ。



 でも、この日の私はビビッていた。目的は女沼からさらに奥へ進んだ山中にある滝。しかしいざ出発と道に出ると、看板が蛇ならぬ「クマ出没」のコーションを出している。日中でも濃い霧のかかるコンディションはクマに遭遇しやすいのだ。
 必死に片手で熊除けの鈴を鳴らしながら歩く。他に人はいないので、何とも心細い。おまけに滝が近づいてくるにつれ水の音が激しくなってくるので、鈴の音がかき消されてしまう。意外とこういうときにクマとばったりというケースも多々あるらしい。喉がからからになりながらも、15分程度の歩きでようやくたどり着いたのが、「思いの滝」。何とも思わせぶりな名前だが、その姿やいかに。
 

思 い の 滝

 
 期待以上の水量とフォルムに、先ほどまでの恐怖が吹き飛ぶ。おお、こりゃ素晴らしい! 明治年間に発電所が設けられ、その脇に観瀑台のような囲いがあってそこから眺めることになる。滝は2段になって流れていて、奥の1段目は手前の岩壁に阻まれ、ここからではよく見えない。通常では沢に入ったり対岸につけたりすることもできなそうだ。第一、水量がすごいので迫力に気圧されてしまう。つつじの鮮やかな赤が、新緑に映えて美しい。落差は20メートルほどだろうか。場所が場所ならいつまでも眺めていたいけれど、背後から熊に襲われるのもイヤなので足早に去る。


周囲は深い森に包まれる
 
 「思いの滝」という、まるで公園の中の人工滝みたいに軟弱なネーミングは、会津落城の際の里娘と若武者の悲しき恋物語に由来しているとのこと。滝の入り口付近には、作者不明の石碑があり、歌が刻まれている。
 若武者は力及ばず倒れ、悲しんだ里娘はこの滝に身を投げたという。娘が蛇となり、女沼に現れてもおかしくはない。