water_sky’s waterbound diary

酒に溶かしたやり場のなさと打ち明けられた愛のあいだ、泥の川とディラックの海のあいだ

苗引?滝[常陸大宮市野口平]☆☆☆☆

 前回の「入日渡しの滝(https://water-sky.hatenablog.jp/entry/2021/07/02/122153)」の関連でもうひとつ。同じ常陸大宮市の旧御前山村地域にある滝をご紹介します。

 もうだいぶ前になりますが、その名も「茨城の滝」というHPがあって県内の滝情報に関してはここが随一と言ってよいくらいの量と質を誇っていましたが、その掲示板では県内外の大小さまざまな滝の情報がやり取りされており、小さなものに関してはそれこそ近所の沢の名前もない落差2、3mほどの滝などの発見投稿なんかもありました。その中に旧御前山地域に滝があるとの情報を見つけたのです、確か。記憶が曖昧でよく覚えていませんが、それで御前山のどこにあるんだろう?と探しに向かったはず。確か「苗引滝」と名前が記載されていたはずです。「茨城の滝」HPもかなり前に閉鎖?されてしまっており確認は取れませんが…。

 それで正式な名前があるのかどうか、苗引滝で間違いないのか(茨城は特に名前も付けられていないような小さな滝が多いので、発見者の暫定的命名や通称として当地の名が付けられることがしばしば)を、田植えの時期にでも行って現地の方にちょっくら聞いてみっぺかな。と思っていてずっと失念していたのでした。今年も昨年を上回るほどの豪雨災害が全国で発生しましたが、という前置きも若干不謹慎ではありますが、入日渡しの滝は普段水量が少ないので大雨が降った直後などがシャッターチャンスかと思われます。苗引滝も同様なので、警報級の大雨でさえなければ梅雨の時期はうってつけというわけです。

 

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苗 引 ? 滝

 

 降雨の2日ほど後に行ってみたので正直どうかなと思いましたが、十分な水量。ベストコンディションではないにしても、水は濁っていないし満足のいく滝身ではないですか。っていうかこんなに見栄えする美しい滝だったっけ? もっと陰気でさえない滝というイメージだったんだけど…(がために紹介するのもはばかられた)。

 水の少ない平常時の写真と見比べると一目瞭然。違う女と逢ったみたいだ。

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 …あらためて12年前(!?)の写真と見比べると、現在は滝正面にアジサイが大きく育っていることに気づきます(しかも7月現在でまだつぼみ??)。自生か、それとも人為的な植栽が行われたかは不明です。ちょうど真正面なので邪魔なことこの上ないが、花が咲いたらそれなりに画になりそうだなあ。

 

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 久々に滝を撮るときの高揚を感じることができた…。

 滝口辺りをよく見ると、2段に近い階層でのごく小規模な段瀑あるいは渓流瀑形状をしており、火成岩の黒い岩肌をサラサラと流れ落ちています。落差は3メートルないほどで小ぶりですが、左岸側は岩壁がハングぎみにせり立っており、ロケーションとしては迫力と静穏を兼ね備えているといえるでしょう。滝の上はどうなっているかというと、高低差の少ない沢が山の中から下ってきており、その流れはすぐ脇にある農業用のため池とも関連していて、以前に導水工事が行われたような跡があります(ため池上部にも人工の?あるいは天然を利用した滝様の水路がある)。

 少し暗い映りになってしまったけれど、動画も。

 

 

 ところで、タイトルと写真中で「苗引?」とわざわざクエスチョンマークを付記したのには理由がありました。というのも今回の訪問に際して地元の方にお話を伺うことができたのですが、その方の仰るには、「苗引」というのは小字名で間違いないのだが、滝より西側の山際から山上の辺りを指し、滝のある一帯は「ナカジマ」というということでした。つまり「苗引滝」の名称の妥当性に疑義が発生したのです。

 とはいえ、国土地理院の地形図などを見ると「苗引」の文字はあるのですが、「ナカジマ」の文字は見当たりません。話を伺った方も、地元とはいえここで生まれ育ったわけではなく滝の存在も知らなかったので、もっと古くからいる人に訊いた方がいいとのことでした。つまり引き続き調査の必要があります。おそらく「苗引」という小字から取って名称としたので間違いないと思いますが、もしご存じの方がいらっしゃいましたら教えていただけるとうれしいです。

 また地元の方もご存じなかったというこの滝ですが、昔からの杣道が付近を通っていますし、ため池や作業道もすぐ近くにあり、また踏み跡や滝壺近くではさほど古くない靴の足跡があったりと足を運ぶ人はそれなりにいるはずで、そこまでマイナーな滝でもないと思います(ネットに情報が無い時点で相当マイナーか)。掲載に不都合等ありましたらご連絡いただければ幸いです。

 

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 苗引滝の近くにはワキミズモドキもあります。普段はそれほど水量があるではないのですが、この日通りかかると雨の影響かかなり勢いよく出ていたので、これは滝の方も期待できるんじゃないか、と思ったのでした。

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  写真では暗くてよく見えませんが、奥の黒い部分は苗引滝と同様に火成岩の岩壁で、その中腹から水が染み出ているようです。そこから流れ下った水を集めて樋で落としているので残念ながらごみの混入が多く、飲用には適さないかもしれません。地理的にはこれより東側の台地の縁で、2、3か所水が滲出している箇所があります。

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