water_sky’s waterbound diary

酒に溶かしたやり場のなさと打ち明けられた愛のあいだ、泥の川とディラックの海のあいだ

奥撫の湧水[日立市十王町高原]☆☆☆☆☆ 

 この湧水を知ったのはごく最近で、「湯殿山湧水(切り目の名水)」のことを調べていたら、近くに湧き水があることがわかってびっくりして見に行ったという次第。以前からこのあたりには湧き水が多いということを聞いてはいたものの、やっぱり道を一本入るとどこに湧き水が出ているかわかったものではありません。

010.jpg 沢(これが奥撫川)沿いの細い道に入り少し進むと、道と沢のあいだに広いスペースがあって、そこに湧き水が出ている。訪れた日には車が2台停まっていた。
 あまりに沢に近いのでまさか沢の水を上げてるわけじゃないだろな。などと思ってしまい、そこにいた人に話を伺うと、湧水源はもっと北の山側にあり、そこからパイプで水を導いているとのことであった。なんでも道路工事によって埋もれてしまった湧き水を数十年ぶりに復活させ、現在のように整備した有志の方が地元にいるらしい。
 一年をとおして水量は変わらず(これは名水のひとつの基準だと思う)、そして水温も一定。「あっこ(あそこ)の切り目の水もいいけど、水の質としてはこっちのほうがいいね」とおじさん。オッ、今日のとれ高いただきました! 出ました、「おらが村の湧き水」。この一言があってこそ、里に湧き出る清水のすばらしさが際立つというものです。
 「まずは飲んでみな」とおじさんに促されてひと口含んでみると、まろみがありほのかに甘みもある感じ。そして水温が一年を通して変わらないということは、この時期はむしろあたたかく感じられるということだ。水がやさしい味なのである。また水量も変わらないとのことなので、地下への滞留期間も比較的長いのではないか。まろみがあるように感じるのもそのせいかもしれない。
 しかも、この湧水を復活させた有志の方、放射性物質の分析検査も民間企業に自費で!依頼しており、不検出だったとのこと。頭が下がります。

 この「奥撫の湧水」は実はふたつの湧水点があり、いま訪れたのが「1号点」。来た道をそのまま北上し、広い農道に出て坂をのぼっていくとまもなく右手に「2号点」がコンクリート壁に挿入されたパイプを伝って湧出している。
011.jpg 1号・2号というだけあって水源は同じなのだろうが、おじさん曰く「(2号点は)コンクリートということもあるので夏はノロが発生して(1号点と比べて)水質は落ちる」とのこと。気分の問題と言われてしまえばそれまでなのだが、というか「湧き水めぐり」そのものがそれまでなのだけれど笑、若干まろみに欠けるような気はした。あくまで気は、ですが。

 いやしかし、気分の問題といえば、2号点の周囲である。下の側溝は写真のすぐ下で斜面となって橋の下の沢に落ち、車線を挟んだ反対側がその沢の流れる谷となっているのだけど、013.jpgその両側ともゴミの投棄がもの凄い。缶やペットボトルは当たり前、酒のパックやら発泡スチロールやら木の板やら部品やらビニール袋やら傘やらアダルトDVDのパッケージやら(遠くて女優は誰かそれとも素人モノなのかはよく見えなかった)。湧き水を汲みに行ってしばしば驚かされるのは、わざわざ周辺にゴミを捨てていく人がわりと多いということだ。この2号点のようなロケーションだと「見た目のありがたみ」が薄いため、ゴミは捨てられやすい傾向にある(湧き水の存在がゴミ投棄の抑止力にならない)のは致し方ないのだが。

 ということで、2号点はいささか残念な感がなくもないが、それはむしろ湧き水のせいではなく、1号点のロケーションの良さ、アクセスの容易さを評価して五つ星を献上したい。
 先の地震で水が止まった際には、多くの人が訪れ車の列をなしたという。時間の経った今ではすっかりもとの静けさを取り戻したが、日常的に汲みに来ている人も多いのではないか。近所にこういう水場があることって、豊かさのひとつの指標になる。

 (1号点、2号点と北上しさらに北へ行くと、高萩市中戸川に入り国道461号、花貫渓谷のほうに抜けるのだが、中戸川に入る手前に田代という地名があり、そこにも湧き水があるとおじさんに教えてもらった。ただし地元の人でないと一般の人にはわかりにくい場所にあるそうだ。詳細がわかり次第、紹介したい。または情報をお持ちの方は是非教えてくださ〜い!)

2013.05 約14.5L/min(4リッターを約16.5秒)
2013.08 約15L/min(4リッターを約16秒)
2014.09 約16.3L/min(4リッターを約14.7秒)