water_sky’s waterbound diary

酒に溶かしたやり場のなさと打ち明けられた愛のあいだ、泥の川とディラックの海のあいだ

台風後の奥撫湧水に行ってみた[日立市十王町高原]

 台風13号がもたらした大雨は、日立市役所の冠水と電源喪失をはじめとした想定外といえる被害をもたらした。特に今回は各地で土砂崩れが発生し、県道36号日立山方線(入四間町や御岩神社や本山トンネルや本山不動滝や日鉱記念館)と県道60号十王里美線(たかはら自然塾や椎名酒造や十王ダム)という二つの重要な路線が寸断された(13日現在で未復旧)ばかりか、日立市十王町高原の沢平地区では県道に通じる唯一の道が通行できなくなったことで集落が孤立し、ヘリで食糧や水が運ばれるという緊急事態となっている(12日午後に孤立は解消された模様)。

 

 日立市十王町高原といえば、このブログとしてはまさに同地の「奥撫の湧水」を折に触れ紹介しており、現状がどうなっているか気になるところ。

 

 奥撫の湧水は先に挙げた県道60号を経由する必要があり、状況がどうか微妙だが、県道36号とを南北につなぐグリーンふるさとラインはどうやら通行できるようなので、向かってみた。結果としては通行止めの箇所は湧水よりもさらに下流日立市内寄りだったのでアプローチは可能だったのだが…

 湧水背後の奥撫川が、通常時とまるで異なり濁流と化していた。茨城が大雨に見舞われたのは8日のあたりなので、5日たってもこのありさまである。水かさこそ落ち着きを取り戻しているのであろうが、わきの道には大量の土砂が流れ込んだと思われる跡が見られる。

 道で側溝の泥さらいをされている高齢男性がいたので声をかけてみると、土砂を取り除く作業を続け、けさ方ようやく水(湧水)が通ったとのこと。近くには土砂の山にスコップが刺されており、苦難の跡がうかがえた。奥撫川は普段は水かさが低いが、今回のような大量の雨水が短時間で入り込めば、湧水の周辺はすぐに越水してしまうような地形だ。あふれた水はそのすぐ下流の田んぼにまで及んだようで、倒れた稲穂と、そこに押し寄せた大量のごみやら木くずやらの悲惨な光景が広がっていた。

 日立市の職員の方が状況確認に現地に入っていたので近く復旧作業が始まると思われるが、正常化までにはしばらく時間がかかりそうだ。奥撫川の清流の姿を思うと、胸が痛む。

 

 もう1か所、付近の湧き水で「七瀬の泉」という場所があるので、そこにも行ってみた。

 付近には結構な規模な土砂崩れの跡があったが、何とこの土砂と土砂崩れによって生まれた沢水のが流入しており、七瀬の泉が消失していた。

近くの七瀬の滝は大瀑布と化していた…

 写真では分かりにくいが、石段を勢いよく沢水が駆け落ち、泉は土砂の流入で埋まり、跡形もない。このショッキングな光景にいささか呆然としながら道を下ると、下った先でも大規模な土砂崩れが発生していた。

 道の両側に大量の土砂が押しのけられており、折れた木々なども多く混じっていることからかなりの土砂の流入があったのだろうと思われる。

 

 素人意見で全く根拠はないことではあるが気になったのは、上記2か所の土砂崩れ地点では、その上層部はヒノキ林になっていて、ちょうど伐採が行われている最中のようだった。さらに沢平地区と思われる場所の航空写真を見てみると、かなり規模の大きなソーラー発電施設が建設されている。憶測でものを言ってはいけないが、今回の土砂崩れの遠因となってはいないだろうか。山の保水力は山の豊かさを示す。と勝手に思っているので、現地の土砂の前に立ってあ。ぽっかり空が見える。というのとGoogleマップで見る大地に敷き詰められたグレーのラバーゴムのような光景には胸騒ぎを感ずるものがあったが、もっと広範に見れば山間部の衰退・枯渇と世界規模の異常気象がリンクして発生することで年々常態化し、地方の崩壊がさらに進んでいくことの象徴として見ることになるのかもしれないと思った。