water_sky’s waterbound diary

酒に溶かしたやり場のなさと打ち明けられた愛のあいだ、泥の川とディラックの海のあいだ

吉ノ目湧水[那須町富岡]☆☆☆☆☆

 ゆっくりと北上してきた台風10号の日本縦断によって、新潟県上越市で40度を観測するなど、全国的に猛烈な暑さとなった。暦の上では立秋を迎えたけれど、「まだまだ暑い」(by「この世界の片隅に」だがこの引用はいささか気が早い。劇中でのセリフは9月のものだからだ)。

 夜の闇すら牛耳っていた威勢の良い蝉たちも今では、昼のべたつく残暑の光の中に別れのあいさつをためらうような鳴き声をよどませている。そう、彼らは去ろうとしている。というか死にかけている。制空権を失いつつある彼らにかわって、大地では草むらに逃げ込んでいた虫たちがいたるところで声を弾ませ始めた。よく耳をすませてみると、夏の終りはそこかしこにその予感を忍ばせてきている。台風の去った後の風ですら、遠くの静けさを運んできて耳元でうなるのだ。

 

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 夏が終る。だが夏の残党は残っている。奴らがまた手ごわい。そんな夏の残党どもをやっつけに、水を汲みにいこうよ。という話です。残暑デートの誘い文句にどう?「ねえ、夏の残党を倒しに、水を汲みにいこうよ」で、どこに行くのか? それが問題である。えディズニーシーとかじゃないの? ウォータースライダーがあるホテルとかに行く口実じゃなくて? 本当に水汲みに行くの? お前はバカか、阿呆か、それとも本物のミズクミストか?

 本当に行くのがミズクミストの本懐だろう。今回、夏の残党狩りに是が非でもおすすめしたいのは、栃木県は那須町に湧き出る「吉ノ目湧水」である。

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吉ノ目湧水

 この湧き水の何がすごいか? はっきり言うと「味」です。おそらく那須連峰の雪が伏流水となって湧出しているのではないかと思われるのだが、その味は雪国の湧水だけで味わうことのできるあの鮮烈で厳然たる清涼、清冽さそのもの。私もひと口飲んでみてこれには心底驚いた。

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 1枚目の写真を見ていただくと分かるように、湧出点の上には不動尊が建っており、水はその崖下の岩盤に穿たれた穴から湧き出ているのだった。そのさまは近寄って見てみてもただたまりとなっているだけのように見えるのだが、通された竹の樋からはかなり豊富な量の水が排出されている。残念ながら手元にデータはないものの、12Lのタンクを30秒くらいで満たしてしまうのではないか。

 以前から気になっていたものの、何度か探しても見つからなかった。確かに細い道を通ってのアプローチになるが、付近に看板も立てられているので、後は地名を頼りに見つけ出してほしい。地元の方があやめを植えて整備されており、またすぐ隣には湿地もあって木道が通されていて、小さな花々を楽しむことができる。前述した不動尊やそこから登っていく小道をたどれば山頂部に小祠、湧き水入り口には明治年間に建てられた鳥居など、散歩・見学にも最適なスポットである。また、車を停める位置から湧出点まで少し距離があるが、ネコが用意されていて汲んだ水を運ぶことができる。

 「夏の残党」ってわれながら良い言葉だなー、と思ってネットで検索してみたら、ちょいちょい使われてましたね。でもいいよね、夏の残党。曲がつくれそう。キリンジみたいな感じか? あんまり聴いたことないけど。

 風に追われた 町を追われた/僕ら陽が翳るまでの夏の残党/いつかたどり着けたなら話すよ この短い永い季節を/だけどもう消えるしかない きっと思い出すこともない/さよなら夏の残党 狩り出せ夏の残党/さよなら夏の残党 狩り出せ夏の残党…

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黄金色の稲穂の向こうに那須連峰。吉ノ目湧水の豊かな水を涵養していると思われる

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近くの墓地に咲いたヒガンバナ。今年もまもなくその季節を迎える

(’17.09訪問)

 

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 最近はエスペランサ・スポルディングの「Touch In Mine」に驚いたり、さよポニの「来るべき世界」に感動したり、IZONEのダンスを見たり聴いたりIZONEを見たり聴いたり、IZONEを見たり聴いたり、なのにしゃべくりを見逃したりして特にネタもないので、3582のこの曲を。夏の終りにR294を北上あるいは南下しながら聴くには最高です。夏の終りのエンディングテーマ。原曲はもっとドープなんですけど、Remixでこんなにメロウでソロウサウンドに。メロウなギターリフはロイ・エアーズの「TAKE ALL THE TIME YOU NEED」から、フィメールボーカルはMary J. Bligeの「My love」を元ネタにしているんですね。Fat JonもFive Deezも、今は活動していないんだろうか…。

 Youtubeに上がっている動画で使われてる、ベースを抱えた少年の画像はフリクリのラストシーン。この曲との関係はないが、オレンジの背景はこの曲が収められたアルバムの色と似てる。