water_sky’s waterbound diary

酒に溶かしたやり場のなさと打ち明けられた愛のあいだ、泥の川とディラックの海のあいだ

小菅町の湧水(仮)[常陸太田市小菅町]☆☆☆

 令和最後の最初の夏の終り。のはじまり。が中盤を迎えようとしています。皆様いかがお汲みでしょうか。墓に参った方も、墓に入った方も、破瓜を迎えた方も、謀られた方も、みなひとしく夏が諸人を包み込み、そして忘却の彼方へと消し去ってゆきます。いや違う、夏は決して忘れることのできない、忘れてはならないものの集積だ。とあなたは言うかもしれない。いや違う、そこらに転がっているのは忘れられたものの影たちだ。忘却の気配と影だけを夏の風の無い道端にとどめているのだ。とあなたは言うかもしれない。どっちでもあるし、どっちでもない。どうとでも言える。解釈だけが、解釈の不自由だけが人の一生につきまとうと言ってもいいでしょう。しかしひとしく皆が確実に知っていること、それは、この夏が終るということ。夏の終りだけが、夏の終りの不自由だけが人の一生につきまとうと言ってもいいでしょう。べつに言わなくてもいいけど。

 しかし湧き水は終ることなく湧き続ける。実際には枯れるけれども、観念上は終りなく湧き続けるのです。そんなこと言ったら夏だって終ることなく続くのですが、それは夏の終りが続くことに近い。世界の終りの静かな呼吸がずっと続くように。そんな、色の褪せた世界の終りに鮮やかに湧き出る水を、今日も探しにゆきましょう、ゆきましょう。

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 少し前に、常陸太田市に良い湧き水があるという話を知り合いとしていたら、その近くにも水が湧いているところがあるとの耳寄りな情報を取得し、嬉々として向かったのが今回ご紹介する湧き水。とはいえ釣り好きな御仁の話なので、どれほど山深く田畑に分け入った場所にあるのかと用心深く現地を探し回ったところ、実にあっけらかんとしたところに湧き出ているのでした。それでは見てゆきましょう。

 

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小菅町の湧水(仮)

 おお~、いいねえ。道端に湧き出る水! たまらないねえ。結構な量が出ているねえ…。

 どこから湧いているのかと見上げてみると…

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 上には民家があるのでした。

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 水は民家の建つ山側の台地から染み出ているようです。おそらく粘土層で形成された崖の上部に砂礫層があって、そこから滲出しているのでしょう。水色の矢印のごとく、崖の広い範囲から水がじわじわと湧出していました。

 この日の湧出量は約17.8L/min.で、持参した4Lペットボトルを約13.5秒で満たしました。これは前出の富士山下の湧水(同日で約10.7L/min.)を上回る量です。これらは排水溝をたどっていくと、かなりの勢いを持った水流となって最終的に崖下を流れる里川へと吐き出されていきます。

 上がすぐ民家ということもあって、汲んで帰るには少し気が引ける感じがあるものの、ペットボトルに汲んでみるとごみの混入はなく、口に含めばすっきりとした味わいでした。

 現地調査が不足しており、正式な名称(たぶん特に無いのでは…)や歴史的経緯(たぶんろくに無いのでは…)など明らかになっていませんので、名称には(仮)と付け加えておきます。

 この湧出のしかたを見ると、どうも里川付近には同じような崖線型湧水が他にもありそうな気がしますねえ… 

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 小菅町の湧水(仮):約17.8L/min.(2019.07)

 

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夏の終りの曲。と聞くと、どんなのを思い浮かべますか。おそらく数え切れないほどの曲が出てくることでしょう。個人的にはパッと思いつくのが曽我部恵一の「夏」ですが、他にもあった、カーネーションのその名もずばり「The End of Summer」(笑)。この圧倒的な大団円感、素晴らしすぎる。直枝さん若いなあ。超大型の台風10号がゆっくりとした速度で日本列島に向かってきているところなので、同じカーネーションの「ハリケーン」でもいいんですけど笑。というかあれか、俺は夏休みに「天国と地獄」を聴いていたんだっけ? この全てを出し切ったような、完全燃焼したような季節… そんなものは… ハレルヤベイビー、足りないのはきっと…忘れかけた… きっと…あの日の… 何だっけ?