こないだ那須の別荘の話になった時、「どうして那須みたいな安易なところに別荘を建てるのか、了見が知れない」などと知ったような口をきいて苦笑されたが、行ってみればあらためて分かる。こんなに都心から近く入れる避暑地でしかも寸前まで平坦なため道路状況が良い=アクセスが容易な場所はないわ。うちからだって気合を入れずにチンタラ車を走らせても2時間足らず(早朝なら1時間30分)で目の前には雄大な那須の山々がそびえ立ってるんだもの。陛下が夏に保養に訪れるのも無理ないよこれは。最高の避暑地だ、那須。馬鹿にしてすみませんでした。おわびに那須の湧き水を紹介します。
といっても「深山ダムの湧き水」といえば、説明する必要もない有名なスポット。今回は避暑がてら高山地帯にふらりと出かけることにしましょう。
那須の山々に囲まれ、その急峻な谷を下ってくる水を集める深山湖から延々と下流へと運ばれていく水、それが那珂川を形成する。明治から戦後にかけて、那須をはじめとする平野部の灌漑整備の中心的役割を果たすべく、こんな高いところにこんなでかい湖がつくられた。さらに揚水発電も行っており、深山湖の東に沼原調整池をつくって夜間のオフピーク時に湖の水を沼ッ原まで上げ、ピーク時の状況に応じて沼ッ原からどごおおおっと水を一気に流し落とすことで大規模な発電が可能となるらしい。ちょっと想像しがたいスケール。全国にはそういうダムがいくつもあるらしいですが。
上の写真の奥に見えるのが、栃木と福島の県境にそびえる大倉山。2012年に流石山からアプローチしたとき、クマと遭遇した思い出の山域であります。
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流石山⇔大倉山の稜線上から見えた深山湖(右)と沼原池(ぬまっぱら)。沼ッ原近辺は捕獲されたクマの放流地なので、近づくのは非常に気が重い
道路はダムの上を突っ切って、湖に沿って奥へと続いている。道路状況は狭いけど良好、さらに進む。
しばらく行くと右手に深山発電所が現れる。道はさらに続き、左側の美しいエメラルドグリーンの湖面を見ながら奥へ進むと、右手に湧き水が突然姿をあらわす!
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といっても、湧き水というよりは単純に沢にビニール菅を埋め込んで水を通しているようなものだ。でもその沢というのがハンパなく、ちょっと登るのも困難なような角度のガレ場を、豊富な水量でもって流れ落ちてくる。水はきわめて清涼で、非常に気持ちよい。残念ながらゴミの混入はそれなりにあり、あくまで厳密な湧き水ではなく沢の水に近い様態なのだけど、まさに高山の生水である。
この沢の水はそのまま深山湖へとだばだばそそぐ。そして湖の水は下り、那珂川となって太平洋へそそぐ。つまり那珂川源流部の水を飲んでいることになるのだ。那珂川といえば近所を流れる川で昔からなじみ深いこともあり、じぃんと感激…。タンクに汲んで持ち帰る。
さて、名残惜しさとともに深山ダムを後にしたら、往路で若干気になった空き地へと向かうことにする。実はそこにもうひとつの湧き水が存在するのだ。
ゴダールの映画に出てくるような、この世のものと思えない美しい光景がそこにはあった。
ここも厳密には沢から水を引いているのだが、パイプは沢の奥へ通じていてどこから取水しているのか分からない。でもゴミの混入はなく、沢を流れたまりをつくる水自体がきわめて清らか。非常な名残惜しさを感じるものの今日のところはこれで…と那須の聖域を後にし、下界に戻ってくると異様な暑さ。そうか、あすこ山ン中だったからあんまり暑くなかったんだ… 水浴びてえ!と思った次第。やっぱり那須、最高…。