water_sky’s waterbound diary

酒に溶かしたやり場のなさと打ち明けられた愛のあいだ、泥の川とディラックの海のあいだ

軍民坂の湧水[茨城県水戸市]☆☆☆ 

 那珂市水戸市の「軍民坂湧水」といえばネット上に多くの情報が載っているし、知らぬ者はないくらいの湧き水スポットである(そうか?)が、震災以降行ってないので、様子を見に足を運んでみた。
 最近だと映画『テルマエ・ロマエ』の撮影場所として一時期見物人が殺到したという、また数年前には外国人の(以下略)という七ツ洞公園が有名になった。田舎のどん詰まりにほとんど世間から身を隠すようにして存在するあの公園は、以前から不思議なもんだなァとは思ってはいたが、まあそこにある以上そんなもんか、とも思っていた。その七ツ洞公園の北側駐車場への途中に、この軍民坂の湧き水(別名:国田の湧水)はある。
 
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 昭和初期に水戸の旧陸軍が道路整備のために岩壁を爆破し、その時にこの湧き水が出てきたそうな。道路の狭さは当時の整備の名残なのだろう。
 以前この地には湧き水と、「三国の滝」とよばれる落差4メートルほどの滝があった。それが爆破によって失われてしまった(湧き水は別の裂け目からふたたび出てきたということになるけど)。その点に関しては口惜しいものがある。三国の滝、見てみたかった。湧き水(写真中央の左あたり)の坂下には道路整備記念の石碑とか庚申塔とか、三国の滝跡みたいなそんなのが建ってる。

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 では井戸を覗いてみよう。古いコンクリで丸く囲われ、豊富な量の水があふれ出し側溝へと流れ落ちていく。そのコポコポという音が何とも心地良い。
 水質検査の結果が張り出されていた。震災を期にあらためてこの湧き水に注目が集まったのだろう。まあ放射性物質がゼロ(検出限界値以下)なのはいいとして、懸案事項は硝酸化窒素の項だ。
 何しろ上には住宅、畑が広がっている。那珂の台地には本当に湧き水が多いけれど、どれも生活圏に位置しているから、生活廃水や畑の肥料などで水が汚染されていないか、そこは気になるところ。軍民坂の湧水においては「5.4(mg/l)」という値だった。これは個人的には、今まで見てきた中でもかなり高いほうに入る。それでも水質基準法では「10以下」と定められているので、セーフ、飲用可である。他に、pH6.2、硬度は76。大腸菌はもちろん陰性。カドミウムヒ素六価クロム・水銀などの検査項目もあったので、確認していただきたい。
 
 2011年の大震災では、被災後3日目くらいに水を求め、ここに来た。たしか昼前だった気がするが、すごい混雑だった。上で合宿でもしていたのか、どこかの専門学生っぽい子たちがでかいポリバケツに水をいっぱい溜め込んで、二人がかりで抱えて持ち上げていったり、ペットボトルを山ほど持ってきている人もいたりで、30リットルあまりを汲み終えるのに4、50分くらい掛かったような記憶がある。
 今ではすっかり静けさを取り戻し、かすかに水音を立てながら坂の途中に佇んでいる。昔は長い坂の休憩所として重宝されただろう。何か、そういう日本の原風景(つってもそれは大概、昭和なんだが)を思い出させるような素朴な風景を味わえるスポットである。
 
・湧出量…計測困難。井戸の割れ目から湧出しているようなかたちなので、タンクなどには汲みづらい。柄杓のようなものを用意するか、ホースを使うと良いだろう。なんか震災で汲みに来た時に、そこに居合わせた方がホース貸してくれたような気がする。
 前述の通り道路は狭いので、車で訪れた場合には注意が必要。待避所や広いスペースも無いので慎重に道脇に停めることになるが、地元の方の生活道路として交通もそれなりにあるので、邪魔にならないようにしましょう。
 
 
 翁の乗ったトラクターがのんびり坂を下っていく。もう稲を収穫する時季なのだ。
 

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