water_sky’s waterbound diary

酒に溶かしたやり場のなさと打ち明けられた愛のあいだ、泥の川とディラックの海のあいだ

古殿町の湧き水(1)・叶神の清水[福島県古殿町]☆☆ 

 古くよりの歴史を街道や風景に今も残し、ひっそりとした暮らしにも流鏑馬や桜の時期には多くの人が訪れ、ひとときの賑わいが生まれる山あいの町、古殿。山に囲まれていることもあって水源は本当に豊かで、街道から里に一歩足を踏み入れれば豊かな自然が繁茂し、深山の趣すら感じられる。
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 福島県では平成18年から、県内の森林環境を守り維持していくため「森林環境税」が導入された。その中には水源涵養林を維持するという目的も当然あり、古殿町ではこれを利用していくつかの湧き水が整備された。シリーズとして4つの水場を紹介していきたいと思う。
 
 まず今回訪れたのは、古殿町仙石の「叶神の清水」。何やら雰囲気を持った名称であるが(叶神「かのがみ」と読む。集落が叶神という)、それらしきものが見当たらない。道路ぎわのはずなんだけどな・・・と出勤時間の車におびえながらキョロキョロとあたりを探していると、見つけました。道路脇に設けられた貯水槽の奥に、それらしき看板が立っている。
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福島県森林環境税によって整備された水場には、この看板が立っている。この存在の是非は措いといて、これが無ければちょっと見つからないくらい、地味に水は出ていた。

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 写真の上のほうにちょっと見えているのは廃墟となった民家で、その下から出ているのだ。後ろはすぐ山とはいえ、これはちょっと、ウ〜ンといった雰囲気だ。貯水槽もあるし昔から水は出ていたのだろうが、ペットボトルで汲もうにも水場があまりにも狭くて、またしばらく整備の手も入っていないようで荒れている。仕方ないので手酌でひと口飲んでみるも、湧出量は決して多くはなく、味もまあ普通の湧き水である。「こんなもんかな・・・」とつぶやき、叶神の清水を後にした。

 「叶神の清水」の脇を走っている県道14号は、いわき市と石川町を結び、「御斉所街道」とよばれ古くから人々に利用されてきた道。古殿町では石川町方面から南北に走り抜けた後、国道349号と合流して東進し、町役場を過ぎてからは山あいの細い谷を東南に向かっていわき市の田人町へと抜ける。
 叶神の清水のあたりは南北に道が通る町の西端で、道の西側には田圃が、東側には集落が急峻な山までの狭い土地に寄り添って並び、今はさびれた風景の静けさに、往時の街道の賑わいを思い起こさせる侘しさが漂う。

 朝霧に包まれる山あいの町、古殿(季節は秋)
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