water_sky’s waterbound diary

酒に溶かしたやり場のなさと打ち明けられた愛のあいだ、泥の川とディラックの海のあいだ

馬ノ墓の種蒔桜[会津美里町旭三寄]

 2022年の桜前線はだいたい平年並みだと聞いていたのに、いざ来てみればあっという間に過ぎ去ってしまった。ゴールデンウイーク中に満開を迎えるはずの越代の桜ですら、4月下旬にはすでに落花盛んとなってしまったのは前回のエントリでお伝えした通り(越代の桜2022 - water_sky’s waterbound diary)。

 春を失った僕は生ける屍のように日々をやり過ごしてきたが(それは傍目にはこの二十数年間の僕と全く変わりなく映ったと思う。うるさいな!)、ある日ツイッターで福島の桜が目に留まった。

 雪山を背に咲き誇る姿は、東北の原風景を思わせた。ここならまだ間に合うかもしれない。そう思って、久々の徹夜行路で向かってみた。

 福島の桜もあらかた終りを迎えていたが、会津地方はまだまだこれからといった感じで花を咲かせていた。山々も雪をまとっており、会津の遅い春を実感させた。


 早朝の冷たい空気と行く先々での桜にだんだんと生きている実感を得ながら、陽も昇って久しい午前6時に「馬ノ墓の種蒔桜」に到着。

 

 

 写真だとかなり大きくて存在感のある桜という印象だったが、現地に着いてみると広々とした畑の中にぽつんと立っていて、「どれだろう… あれかな? あれだあれだ!」という感じで見つけることができた。遠目からだと小さく見えるが、近寄ってみればさすがの威容。

 

 

 現地の案内板によれば、当地には昔、薬師堂があり、境内には桜が美しい花を咲かせていたとのこと。この桜が現存する一本だろうか。樹齢約400年のベニヒガンザクラで、ちょうど開花時期が稲の種蒔き時期に重なることから、人々がいつしか種蒔き桜と呼ぶようになったという。ちなみに薬師堂は当地の字に残っており、桜の近くには石塔や墓石など、健在のころを思わせる遺構も残る。

 

 

 周囲を見渡すと、広々とした平地の向こう、四方を山に囲われている。この日の福島は西から天気が崩れる直前の晴れで、朝から霞がかった空模様。磐梯山の尖峰も見えるには見えるが、ちょっと雪山をバックに撮影するには厳しいかな…と思いとりあえず別の場所へ移動することに。ところが、馬ノ墓の種蒔桜が前座となってしまうような、僕が求めていた東北の原風景的桜と出合うこととなった。続きは次回。