water_sky’s waterbound diary

酒に溶かしたやり場のなさと打ち明けられた愛のあいだ、泥の川とディラックの海のあいだ

acute!! 秋保大滝[仙台市太白区]

 宮城の秋保大滝へ行ってきました。

 ド迫力!

 ドしぶき!

 acute!!*1

 これに尽きます。

秋 保 大 滝

 

 普段から水しぶきを浴びるような水量ではあるようですが、折りしも宮城県内では記録的な大雨による災害が発生しており、その影響もあったのでしょう。滝つぼで完全に気圧された私は右往左往するばかりだったと言わざるを得ません。実際に滝つぼはごつごつした岩場で、安定して眺められる場所が少ないんだ。

大量の水がどしゃあ。といった勢いで一気に滝つぼに叩きつけられ、無数の細かいしぶきとなって谷を駆け抜けてゆく

 

 5分もいれば全身しっとり濡れてしまうほどの水しぶきの中、限られた足場で良いアングルを探るのは実に骨が折れ、1枚撮ってはピントが合わずレンズが濡れ、1枚撮ってはカメラも濡れまたピントが合わず、の繰り返しでなかなか集中して写真を撮ることはできませんでした。それでも暑いさなかに全身に水を受ける気持ちよさ! 爽快感と充実感に浸… 浸… 浸れるかーい!

 と、言うのも、滝つぼにはひっきりなしに若いカップル連れが降りて来てはキャッキャと嬌声を上げ楽しんでいるのでした。滝の下流には秋保温泉郷があり、ゆうべはお楽しみでしたね?的な?男女が朝から水にしっぽり濡れているのを遠目に眺める私は、私の心は、千々に乱れた。汗だくのシャツでいつまでも遊ぶつもりだっけ? それはずるいよね。

若い男女に囲まれながらストイックに追いかけてます的な風を装って捉えた秋保大滝のアサノヒカリ

 滝は観光気分で来るところじゃねえ! と怒鳴りたくなってしまうが(完全にいちゃもんつけるだけの嫌な中年になっている)、秋保温泉に近いうえに日本の滝百選に入っており、あまつさえ日本三名瀑のひとつに数えられることもあるそう。茨城県民としては、あの、袋田の滝は…? となるところですが(だいたい三名瀑の話になる時には袋田の滝が除外されるんだ)、まあそれもむべなるかな。と思ってしまう滝の迫力。

 知名度としても実力的にも集客力の高い秋保大滝、今さら詳細に説明するまでもないですが、名取川を流れ落ちるこの滝は落差約55mの直瀑。滝の形成した谷沿いに秋保大滝不動尊、西光寺などの名刹がひっそりと並び、奥へと道をたどれば滝右岸側から眼下に眺められる小さな滝見台があります。ここから左岸側の滝つぼへ迂回できる遊歩道が下へと伸びており、あるいは車で下って橋を渡れば小さな駐車スペースがあり遊歩道に合流、そこから階段を下って約5分で滝つぼです。階段は結構急で段差も大きいのですが、道幅は広く取られているし手すりもしっかりしているので危険な感じはしません(福島・郡山市の銚子ケ滝の滝直下に下りる道より全然楽。昔あの急な道をハイヒールで来てた人いたな)。木々の間から滝の真っ白なしぶきとそこに架かる虹が見えることでしょう。熊出没の看板が立っていましたが、林に囲まれて薄暗いので朝夕は特に注意が必要かもしれません。でもみんな特に気にせず歩いてたね。鈴持ってたのは私くらいでした。

大滝で右往左往するのに疲れたら、谷に退避してそばを流れ落ちるこちらの滝へ。スローシャッターでのんびり遊べる

 仙台市内から車で3、40分、ほぼ一本道で秋保温泉に秋保大滝と、観光名所にたどり着ける。このアクセスの良さ、都市から自然へとダイレクトに切り替わる鮮やかなグラデーションに仙台という地の太い体力を感じさせられました。

 

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 この度仙台へ向かったのは、グレイプバインの「another sky」というアルバムの再現ツアー「grapevine in a lifetime presents another sky」を観に行ったからでした。「another sky」は2002年に発売、すなわち今年で20年。原付バイクに乗って、夕暮れに沈んでいく光と影を見つめながら毎日のように聴いていたアルバムであり、他とはまたちょっと違う、ある種の感慨に満ちた作品でもあって、そのリビジッドとなれば行かぬわけにはいかないだろうと、私の20年が一体何だったのか区切りをつけるような気持ちで向かいました。いろいろ思うところはありますが、「CORE」での西川アニキのギターで思わず落涙。確かに、確かに「Scare」は「Southbound」ツアーの時のようなキレはなくなっている、そりゃあ無敵の20代でしたもの、しかしアニキのギターは20年前のそれと全く変わらないacuteな響きに満ちていた。そうです、私の20年はもうほぼ文字通りに無為に過ぎた。「自業自得」「因果応報」といった言葉は某山上容疑者に浴びせるものではなく自分にこそふさわしい、そんな20年でした。しかし、20年後の「another sky」はそのcolorsを全く新鮮なものとして再び姿を現してくれたのです。全編サラリとやってくれたのもよかった。ある種の感慨を勝手に背負って、あまつさえその重みで死ぬかもしれないと思い込んでいた私にとってはそれは大げさだが救いでもありました。それは20年の年月が無為に去ったことの反映でもありますが、良くも悪くもその20年は消え去ったのです。田中さんのコンディションも抜群だった、それにいつ見ても若い。田中さんが冒頭のあいさつで両手を広げたのがGLAYの真似だったのを知ったのは後日。「コーヒー付」を聴けたのもよかった。「それでも」や「さみだれ」は、つまりその、仙台の人にどのように響いたのかは気になった。そして、もっともアンサンブルが決まっていて感心したのは「ねずみ浄土」。モパサンTシャツのLが売り切れていて残念だった。

 

*1:鋭い、強烈な。GⅠ3勝を挙げたワンダーアキュートという名馬の名前の由来がこの語。ワンダーアキュートは鋭いというよりもタフという印象が先に来るが、ゴール前できっちりと差し切った帝王賞などはスマートな鋭さを感じさせた