water_sky’s waterbound diary

酒に溶かしたやり場のなさと打ち明けられた愛のあいだ、泥の川とディラックの海のあいだ

中島の清水[白河市大信]☆☆☆☆☆

 今年も夏がやって来ました。ひとつの季節がやって来るということはひとつの季節が去っていくというのがこの国の理であり、万物流転盛者必衰の法則だったはずですが、今年は新型コロナが居座って去ってくれません。市中では事実上の"第2波"が席巻し、人々は護符を文字通り身に着けるかのごとくマスクを着用し。た上で高速で運ばれてくる(そして海苔のすっかり湿り切った)寿司を食うなどしており、思わず「気が狂ってんのかこいつら」と嘯いてしまいそうな真昼のストレンジランドで、マスクを着けない。ということは文字通りの阿呆面を公衆の面前にさらす大愚行である、犯罪と定義されたわけではないものの。そんな狂いかけた(それは俺だけだが)夏になっているのでした。

 夏なんてもっと色っぽいもので、それが自分にはとんと縁がないと思っていた。夏には憂鬱とその透明な輪郭だけが蝉の鳴き声によって構成されたからっぽの季節だと思っていた。年を経るごとに、いや今年などは純白のマスクという可視化された状態で憂鬱が街をさまよっている姿を堪能できる。何て憂鬱なんだ。マスクのビキニ、、とつぶやいてみても楽しくも何ともない。それは外さないから。おもにソーシャルディスタンス、というかディスタンスによって。

 とまあ、夏は否が応にも倦んでしまう季節ですが、コロナで倦んでしまうことはありません。ミズクミストにとってコロナなど瑣事同然。何せ水場に人なんてろくにいやしませんからね。政府は停滞の続く経済の立ち直りを企図し「GO TO」キャンペーンを喧伝していますがその通りで、まさにGO TO 水汲み。問題は水を汲んでも水道代が浮く(浮くか?)くらいで経済は回らないことだが…。気温が40℃を上回ることもそう珍しいことでなくなりそうな今日この頃、「飲み干せコロナ」キャンペーンと題しまして(題しません)、昨年行って印象深かった福島の湧き水を幾つかご紹介していきます。

 なお、福島の湧き水に関しては他の記事も同様ですが、ほぼ全てを「ふくしま湧水物語」(福島民報社、2003年)という書籍から情報を得ています。パクってます。この記事群を読んで福島の湧き水に興味を持たれた方は、福島民報社に問い合わせてみてはいかが。

 

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 とりあえずワンパン! うひょーーーーー!!

 と叫んでしまう(そして数多の飛沫が散る)ほど清冽な水が豊富に湧き出る「中島の清水」です。旧大信村と西郷村の境に近いところに大信トンネル(1997年竣功、延長325.4m)が通っており、その北側の少し低まった場所に湧出しています。広い駐車スペースが整備されており、そこから階段を少し下りて到着です。

 

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 さて「中島の清水」の周囲は那須山塊、甲子高原、二岐山、羽鳥湖、布引高原等々…、北西から南西までぐるりと大自然に包囲されており、湧き出るのも量・質共に妥協の概念を持たない、まさにまさなる「水」なのでした。ちびてーーーーーーー!!

 

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 僕の"水行"基本セットは、12Lポリタンク×2、4Lペットボトル×6×2の計72Lです。この日は48Lでしたが、あまりに豊富な湧出量ゆえに枷として拘束具を着けさせられているとしか思えない2つのパイプ管からとめどなくあふれる水のおかげで、あっという間に汲み終わってしまいました。駐車場まで階段を上がらなければいけないのが少し難点で、たくさん汲む人は注意が必要でしょう。

 

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 周りを囲むは手付かずに近い自然ということもあって、この看板「熊出没注意」と書いてあります。

 

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 「中島の清水」は白河市中心部から北へ20分ほど車を走らせた山の中。行き帰りに市内の白河ラーメンを食べていくのもいいですね。僕はこの日、「カネダイ」さんで食べてから水場へ向かいました。無料で突き出しのところてんがついてくる、一般的な白河ラーメンとは少しスープや具が異なる、でもその素朴でほっとする味はまさに白河ラーメン。なおいしいラーメン屋さんです。

 次回はここから少し白河市街地へ戻った、国道沿いの湧き水などを紹介します。

(2019.05訪問)

 

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 まずはこちらをご覧いただきたい。

 「アニメかよ、しかも学園もの」そう。前回のエントリで「電脳コイル」を紹介したが、amazonプライムで適当に観てみたのがきっかけで、他にもいい作品があるかなと探したうちのひとつがこれ。タイトルはちらと聞いたことがあるくらいで、こちらも全然期待せずに観た。まあよくある学園のドタバタラブコメだよな、と思った。嘘である。この男、ずっぽりハマってしまい藤原書記の「チカっとチカ千花っ♡」の再生回数を伸ばす貢献を日夜繰返し、仕事場でもつい「チカッ☆」などと口をついて出てしまうほどである(「森へお帰り」の出典元であるコミック2巻第15話「白銀御行は逃げ出したい」もアニメで観てみたかった。硬直胸つかみはNGだったか?だがアニメ化したらどんなだろうと夢想するのも楽しい)。あの動画全部手描きなの? すげー、信じられない。だが藤原書記は第1期OPの1:01~を白眉としたい。ただ腕を振って踊っているだけなのだが、この数秒は私にとってキモくも言うなれば"女の子"という概念のひとつの理想像の現出だ。これだけでこの作品に出合えて本当に良かった。藤原千花はどうやらアニメーターたちの創作意欲を刺激するキャラではないかと思うのだが、他にもOPタイトルからの0:18~、藤原千花を上からぐるりと回転して正面に回るシークエンスも、えもいわれぬ魅力に満ちている。これらの魅力とは、それ自体を認識した瞬間に認識からこぼれ出てしまうところにその本質がある。何度観返してもその魅力がつかみ切れないのだ。だから何度も観返してしまうことになる。

 魅力といえば、OPナンバーを歌う鈴木雅之の素晴らしさにも、遅まきながら改めて気づかされた。私は1982年生まれなので普通に「もう涙はいらない」や「恋人」「違う、そうじゃない」というヒットナンバーやラッツ&スターなどの認識で、有名すぎるあまり自ら積極的に聴くことはしなかった。鈴木雅之がアニメの主題歌を歌う時代になったのだな、とも思うが、片手間に歌ってたとしたらどうしよう…などという杞憂が、下の動画を観て感動に変わる。さすが鈴木雅之、自身の全国ツアーでノリノリでやり切っている。かっこいい!

 第1期OP「ラブ・ドラマティック feat. 伊原六花」が収められている2019年のアルバム「Funky Flag」も聴いてみたが、全曲懐かしのファンキー&メロウナンバーで、スタイリストとしての鈴木雅之の矜持が全くブレていないことに驚かされる。

 「ラブ・ドラマティック」が思いのほかフィットしているのが面白いが、それでもやはり他の曲と比べればアニメ主題歌という宿命により解像度が一段上という違和感は拭えない。ただその違和感など鈴木雅之の名のもと回収されればほとんど問題にもならないだろう。どの曲もどこかで聴いたような感じだが、それがいい。特に「Turn off the light」なんてよくあるスローバラードではあるが、ただいたずらに年だけを重ねてしまった私のような腑抜け人間でも、「誰も 心の中に そうさ/戻ることのできない場所がある/覚めない夢を見ているように」という、ある意味ではありきたりな歌詞にも、心にずきんと走るものがある。それは鈴木雅之という"アクター"の無意識の波動に拠るところが大きく、それがイコール歌い手としての度量であろう。

 あとこれも知らなかったが、カヴァーアルバムで布施明の「君は薔薇より美しい」を歌ってたんですね。これも一聴して文字通り鳥肌がしばらく止まらなかった。