water_sky’s waterbound diary

酒に溶かしたやり場のなさと打ち明けられた愛のあいだ、泥の川とディラックの海のあいだ

栃木の無名?桜[大田原市某所]

 3月に入り、空気が暖かくなるとともに天気の移り変わりが激しくなってきました。毎年この時季は特に気分が重くなります。冬の終りを告げる冷たい雨の音を聞きながら、私は途方に暮れています、馬券が当たらないからって? それはその通りだけど、今は馬券が当たらないオチで済ませる気力もない。僕を取り囲み追い詰める何か暗い予感、それとまさに反比例するかのごとく開花してゆく桜。このコントラストが意味するものは?

 まもなくやって来る、否が応でもやって来る桜の季節に向けて、いかなる心持でいればよいのか今年もはかりかねたまま、私は桜の写真を加工しています。ま、悪くはない。悪くはないでしょ。悪くはないよね…? そんな感じです。復習と予習を兼ねて。

 

 去年は桜の開花が各地平年より1週間前後早く、そこから満開に至るまでがあっという間だったような気がします。これを書いている7日時点では、2019年の桜開花は去年と同じか数日程度遅いという予想が出ています。

 というわけで、写真。栃木県は大田原市某所の桜。

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  去年は大田原市の磯上の山桜(磯上の山桜[大田原市両郷] - water_sky’s waterbound diary)がちょうど良いタイミングで撮影できましたが、この桜も同日、4月の10日に撮ったもの。こちらはすでに散り始めていました。

 地図かカーナビで道を勘違いして袋小路にさまよい込んだ先で偶然見つけたこの桜、その際近所の住人の方から桜についてのお話を伺ったのですが詳細を忘れてしまったために「無名?」となっています、おそらく墓守の桜ではないかと思われます。

 数日前にも他県ナンバーの車が入ってきて、三脚立てて写真を撮っていった人がいるよ、とのことで、やはり目ざとい方はいるもの。桜のたもとにはお地蔵様が建っており、静かな里の風景に心がなごみます。

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  ロケーションの素晴らしさに思わずレンズを向けましたが、花の時季を逸しておりこれは失敗写真。桜の詳細と、ばっちりの写真が撮れればまたブログでご紹介したいですね。

 無名の桜にも、無名な私たちにも、ひとしく春はやって来る。そのやさしくも残酷な事実を、雨が降りやんだ後に訪れた、あれほど愛したはずの親密さ(intimacy)の失せた世界を、ひとまずは受け入れることしか私たちにはできないのです。

 

 

 何となく思い出した、マイルス・デイヴィスの「メイシャ」。何となく春といえば春っぽい。歪んだキーボードの不穏な響きは、ダンス・ミュージックをつくっているのにマイルス自身は(骨折して)踊れない。という倒錯がうみ出した素朴な安寧の風景を編み出しているのではないかと思えば、不思議と身をゆだねるに易/優しい。